ビルドアップ走の効果と設定ペースは?フルマラソン完走を目指すランナー向け実践ガイド

yusuke saito
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初心者ランナー
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ビルドアップ走の効果ってなに?また、どのくらいのペースで行えばいいの?

そんな疑問にお答えします。

ビルドアップ走とは、段階的にペースを上げていくトレーニング方法です。

レースペースよりゆっくりのペースから始め、最終的にはレースペース、もしくはレースペース以上のスピードで走ります。

時間や距離に応じてペースを上げることで「スタミナ(持久力)」や「スピード持久力」など、マラソンに必要な能力が鍛えらる、効率の良いトレーニングです。

そんな今回は、ビルドアップ走のトレーニング方法についてご紹介します。

ビルドアップ走とは

ビルドアップ走とは、段階的にペースを上げていくトレーニング方法です。

レースペースよりゆっくりのペースから始め、徐々にスピードを上げていき、最終的にはレースペース、もしくはレースペース以上のスピードで走ります。

下記のように、ペースを上げていくトレーニングがビルドアップ走になります。

レースペース + 20秒/km

レースペース + 10秒/km

レースペース

レースペース – 10秒/km

このように異なるスピードで走ることで、マラソンに必要な「スピード」「スピード持久力」「スタミナ(持久力)」、この3つの能力をまんべんなく鍛えることができます。

また、段階的にスピードを上げていくので、急激に(身体へ)負荷をかけることなく、リズムよく走行できるトレーニングでもあります。

ビルドアップ走の運動強度は?

運動強度とは、その運動をするのにあたり、あなた自身の身体にかかる負荷のことを言います。

ランニングでは「走るスピード・時間」により運動強度が変わり、ゆっくり走る際は強度は低く、スピードを出して走る際は強度は高くなります。

ここで、運動強度を示すものとして「心拍ゾーン」を紹介します。

心拍ゾーンとは心拍数ごとに運動強度の段階を区分けしたもので、自身の最大心拍数(100%)に対し、どのくらいの割合の運動強度であるかを判断する指標です。

心拍ゾーンは一般的に5つに分けられます。

心拍ゾーン最大心拍数の%ゾーン
590〜100%無酸素ゾーン:酸素代謝を主なエネルギー源とするため、長時間行うことはできないが、耐乳酸能力と最大酸素摂取量を高めることができる
480〜90%マラソンペースゾーン:マラソンの際の目安となる心拍数
370〜80%有酸素ゾーン:中程度のトレーニング能力と効率を上げ、身体能力を高める基礎トレーニングに、最も適したペース
260〜70%脂肪燃焼ゾーン:快適で会話ができるペースで、脂肪燃焼率が最高の心拍ゾーン
150〜60%ウォーミングアップゾーン:リラックスしたペースでの、運動前のウォーミングアップと、体力回復のゾーン
Running Magazine Courir 2022.Apr.より引用

(上記、表のとおり)心拍ゾーンの数字が大きいほど運動強度が高く、小さいほど強度が低くなります。

ビルドアップ走は「心拍ゾーン3〜4」と、強度はやや高い部類になります。

マラソンのレースペースで走るため、ある程度、土台を作った※上で走ることをおすすめします。

※60分間、余裕を持ってジョギングできるくらい

ビルドアップ走の効果

マラソンを完走するには、「スピード」「スピード持久力」「スタミナ(持久力)」の能力を鍛える必要があります。

  • スピードとは、短い距離を速く走る能力
  • スピード持久力とは、より速いペースを、より長く持続させる能力
  • スタミナ(持久力)とは、より長い距離・時間を、無理なくラクに走り続ける能力

ビルドアップ走は、レースペースよりゆっくりのペースからレースペースまでさまざまな速度で走るため、上記の能力が効率よく鍛えられます。

[効果①] スタミナ(持久力)の強化

まず、 1つ目がスタミナ(持久力)の強化です。

スタミナ(持久力)とは、より長い距離・時間を、無理なくラクに走り続ける能力のことです。

レースペースより遅いペースから入るため、「有酸素能力」や「脂肪燃焼効果」を促進し、持久力を養うことができます。

持久力の強化
  • 有酸素能力を高める
  • 脂肪燃焼効果がある

そもそも、人は走り続けるために、「糖」と「脂肪」この2つをエネルギーに変えていきます。

「糖」はスピード練習のように、息が上がるようなトレーニングの際に良く使用され、「脂肪」は運動強度の低い(LSDトレーニングなど)ときによく利用されます。

遅いペースで走ることで、「脂肪」がたくさん使われ、脂質代謝が促進されます。

また、「脂肪」を使用するには酸素が必要となりますが、遅いペースで走ることで筋肉の毛細血管を発達させることができ、筋肉の隅々まで酸素を運搬する能力が向上します。

なので、ビルドアップの1段階目は持久力を養うトレーニングも兼ねているのです。

[効果②] スピード持久力の強化

続いて、2つ目はスピード持久力の強化です。

スピード持久力とは、より速いペースを、より長く持続させる能力のことです。

レースペースで走る2段階目では、「有酸素能力」や「脂肪燃焼効果」、「乳酸除去能力」を養うことができます。

スピード持久力の強化
  • 有酸素能力を高める
  • 脂肪燃焼効果がある
  • 乳酸除去能力

ゆっくりのペースでは10kmラクラク走れるけど、ペースを上げた途端、5kmしか走れなかったことはよくあります。

その速いペースを維持し続ける能力がマラソンでは重要です。

また、体内に溜まった「乳酸」をエネルギーに再利用する能力が身に付くため、より長い時間ペースを維持できます。

[効果③] スピードの強化

最後、3つ目は、スピードの強化です。

スピードとは、短い距離を速く走る能力のことです。

レースペースより速いペースで走る3段階目では、「心肺機能の向上」や「筋肉の速筋」が鍛えられます。

スピードの強化
  • 心肺機能の向上
  • 筋肉の速筋が鍛えられる

筋肉の速筋は、ジョグのようなゆっくりペースでは鍛えられないため、スピード練習と同じ効果があります。

また、レースペースより速い速度で走るため、マラソンのレースペースを余裕持って走れるようになる(身体に余裕度をもたせる)ことができます。

ビルドアップ走の設定ペース

続いて、ビルドアップ走の設定ペースを見ていきます。

今回は、4段階的ごとにペースアップした設定ペースを紹介します。

レースペース + 20秒/km

レースペース + 10秒/km

レースペース

レースペース – 10秒/km

サブ3.5の設定ペース

サブ3.5(3時間30分以内に完走)の場合、レースペースは4分58秒/kmとなるので、ペースは下記の通りです。

レースペース + 20秒/km5分18秒/km
レースペース + 10秒/km5分08秒/km
レースペース4分58秒/km
レースペース – 10秒/km4分48秒/km

サブ4の設定ペース

サブ4(4時間以内に完走)の場合、レースペースは5分41秒/kmとなるので、ペースは下記の通りです。

レースペース + 20秒/km6分01秒/km
レースペース + 10秒/km5分51秒/km
レースペース5分41秒/km
レースペース – 10秒/km5分31秒/km

サブ4.5の設定ペース

サブ4.5(4時間30分以内に完走)の場合、レースペースは6分23秒/kmとなるので、ペースは下記の通りです。

レースペース + 20秒/km6分43秒/km
レースペース + 10秒/km6分33秒/km
レースペース6分23秒/km
レースペース – 10秒/km6分13秒/km

サブ5の設定ペース

サブ5(5時間以内に完走)の場合、レースペースは7分06秒/kmとなるので、ペースは下記の通りです。

レースペース + 20秒/km7分26秒/km
レースペース + 10秒/km7分16秒/km
レースペース7分06秒/km
レースペース – 10秒/km6分56秒/km

サブ5.5の設定ペース

サブ5.5(5時間30分以内に完走)の場合、レースペースは7分49秒/kmとなるので、ペースは下記の通りです。

レースペース + 20秒/km8分09秒/km
レースペース + 10秒/km7分59秒/km
レースペース7分49秒/km
レースペース – 10秒/km7分39秒/km

サブ6の設定ペース

サブ6(6時間以内に完走)の場合、レースペースは8分31秒/kmとなるので、ペースは下記の通りです。

レースペース + 20秒/km8分51秒/km
レースペース + 10秒/km8分41秒/km
レースペース8分31秒/km
レースペース – 10秒/km8分21秒/km

ビルドアップ走の取り組み方

ビルドアップ走には、「時間」で区切る場合、そして「距離」で区切る場合の2つがあります。

時間で区切る

「時間」で区切る場合は、計30〜90分など時間で、3〜4分割ごとにペースアップしていきましょう。

初心者向け

40分ビルドアップ走

10分:レースペース + 20秒/km

10分:レースペース + 10秒/km

10分:レースペース

10分:レースペース – 10秒/km

合計40分を4分割し、10分ごとにペースアップしていきます。

時間は短いため、初心者向けのメニューです。

中級者向け

80分ビルドアップ走

20分:レースペース + 20秒/km

20分:レースペース + 10秒/km

20分:レースペース

20分:レースペース – 10秒/km

合計80分を4分割し、20分ごとにペースアップしていきます。

やや時間を延ばした、中級者向けのメニューです。

上級者向け

40分ビルドアップ走

10分:レースペース + 10秒/km

10分:レースペース

10分:レースペース – 10秒/km

10分:レースペース – 20秒/km

初心者向けの40分と時間は同じですが、設定ペースがレベルアップしています。

設定ペースが全体的に速くなっているため、より「スピード持久力」や「スピード」を鍛えたい方におすすめです。


ランニングウォッチに現在の走行ペースが表示されるため、(あなたの)目標のレースペースに合わせて、速度を調整しましょう。

ポイント

スキマ時間に取り組みたい、トレーニング時間をあらかじめ決めたい方に向いているやり方です。

距離で区切る

「距離」で区切る場合は、10〜30kmなど距離ごとにペースアップしていきましょう。

初心者向け

10kmビルドアップ走

2km:レースペース + 20秒/km

3km:レースペース + 10秒/km

4km:レースペース

1km:レースペース – 10秒/km

合計10kmを4分割し、1〜4kmごとにペースアップしていきます。

距離は短いため、初心者向けのメニューです。

中級者向け

20kmビルドアップ走

5km:レースペース + 20秒/km

5km:レースペース + 10秒/km

5km:レースペース

5km:レースペース – 10秒/km

合計20kmを4分割し、5kmごとにペースアップしていきます。

フルマラソンの半分の距離を走る、中級者向けのメニューです。

上級者向け

30kmビルドアップ走

10km:レースペース + 20秒/km

10km:レースペース + 10秒/km

9km:レースペース

1km:レースペース – 10秒/km

合計30kmを3分割し、10kmごとにペースアップしていきます。

最後の1kmはレースペースより速く走れるほど、スタミナが残っていることが望ましいです。


30kmビルドアップ走は、現在の”走力”を知る、良い機会です。

最後まで設定ペースで走りきれれば良いですが、途中でペースダウンしたり、立ち止まってしまった場合は目標設定を見直す必要があります。

ぜひ、レースに挑戦する方はレース1ヶ月前までに行い、レースに備えましょう。

ポイント

時間に余裕がある方、しっかり距離を踏みたい方におすすめのやり方です。

ビルドアップ走を行う際のポイント

[ポイント①] 平坦、かつ止まらずに走れる場所で行う

平坦、かつ止まらずに走れる場所で行うのが理想です。

例えば、河川敷やランニングコースのある公園などが挙げられます。

街中だと、信号でストップしたり、十字路で減速したりと、一定したリズム・ペースで走ることはできません。

また、アップダウンが多いと、設定ペースを維持するのが難しくなります

なので、ノンストップで最後まで走れる場所で行うことをおすすめします。

ポイント

トイレ休憩できる場所を確認しておくと、安心です

[ポイント②] エネルギージェルを補給する練習をしよう

フルマラソンを完走する上で、レース(走行)中のエネルギー補給は欠かせません。

マラソン完走するには約2,500kcalのエネルギーが必要で、人間の体内に貯めておけるエネルギーの量は約1,500kcalしかありません。

必然的に約1,000kcal足らない計算になるため、ランナーは適宜、(レース中に)エネルギー補給を行い、”力”を蓄えます。

エネルギー補給は、主に「エネルギージェル」と呼ばれる食品で行うため、レースに出場する方はLSDトレーニング中に試食しましょう。

ジェルは「味」や「成分」がさまざまなので、レース本番にいきなり食べて、腹痛や気持ち悪くなるといったトラブルを防ぐことができます。

20〜30kmビルドアップ走を行う際に試食して、自身に合うジェルを選びましょう。

詳しくは、フルマラソンにおすすめの補給食15選【サブ3.5、サブ4、サブ5向け】で解説しています。

[ポイント③] 水分補給は15〜30分ごとに行う

人間は、水分を一度に吸収できる量に限りがあります。

また、「喉が渇いている」状態はすでに脱水が進んでおり、そのタイミングで一気に飲んでも、喉の渇きは解消されません。

そのため、こまめに水分補給を行い、脱水状態を防ぎましょう。

目安は15〜30分間隔です。

公園など周回コースで行う場合は、1ヶ所に飲み物を置いておき、1〜2周するごとに水分補給しましょう。

ワンウェイコースの場合はウエストポーチなどに飲み物を携帯する、もしくはコンビニ等で都度、購入すると良いでしょう。

ランニング中に発汗するため、「水」や「お茶」よりもミネラルが摂取できる「スポーツドリンク」がおすすめです。

アクエリアスやポカリスエットなど飲むようにしましょう。

関連記事:ランニング初心者のための水分補給ガイド!おすすめの飲み物や水分補給のタイミングは?

[ポイント④] ウォッチは意識せず、感覚でペースアップする

逐一、(ウォッチで)ペースを確認するのではなく、感覚でペースアップするのが望ましいです。

キッチリ、設定ペースで走ろうと、神経質になりすぎると、かえってペースを乱したり、余計な体力を使ってしまいます。

なので、ウォッチは走行距離や走行時間を参考にする程度の使用に留めましょう。

理想はウォッチを見なくても、「今、5分10秒/kmペースで走れているな」と、ペース感覚が身につくことです。

ただ、大幅なペース変動は好ましくないため、「一切、ウォッチを見てはダメ!」というわけではないですが、できる限り、自分の感覚でペースコントロールしましょう。

[ポイント⑤] キツいときはスピードを落とす

時間や距離ごとにペースアップしていきますが、キツいときはスピードを落としましょう。

無理して、設定ペースを維持しようと走り続けると、足を痛めたり、途中リタイアによるモチベーション低下の原因となります。

ペースダウンしてしまった際は、次回の設定ペースを見直し、最後まで走りきれるようにしましょう。

何回も繰り返し行うことで、自分の最適なペースが分かり、より自分に合ったトレーニングができるでしょう。

[ポイント⑥] ジョグ用のシューズと履き分ける

ビルドアップ走はレースペースで走るため、スピード練に近いトレーニングです。

そのため、スピードを出して走る用のシューズで走りましょう。

シューズは目的によって履き分けると良く、下記のように大きく3つの目的に分けられます。

シューズの履き分け

初心者ランナーは、何足も揃えられないため、「ゆっくり走る用」と「レース用」の2足用意し、ビルドアップ走は「レース用」を履いて行うと良いでしょう。

サブ3.5を目標にしている方は、サブ3.5向けの中から「レース用」を、サブ4向けの中から「ゆっくり走る用」のシューズを選ぶ。

サブ4を目標にしている方は、サブ4向けの中から「レース用」を、サブ5向けの中から「ゆっくり走る用」のシューズを選ぶと良いでしょう。

まとめ

今回は、ビルドアップ走のトレーニング方法についてご紹介しました。

改めて、ビルドアップ走とは、段階的にペースを上げていくトレーニング方法です。

レースペースよりゆっくりのペースから始め、最終的にはレースペース、もしくはレースペース以上のスピードで走ります。

「スピード」「スピード持久力」「スタミナ(持久力)」の能力を効率よく鍛えられるため、ぜひ取り組みましょう。

本日は以上です。

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初心者のためのマラソンブログ「31らん(さいらん)」運営者。2018年6月にランニングを始め、年間2,500km走ってます。これまでの記録は、【フルマラソン】 4:06:27(第32回ぐんまマラソン) 【ハーフマラソン】 1:46:18(第39回フロストバイトロードレース)【10キロ】42:47 【5キロ】19:08 【1キロ】3:17 マラソン大会に向けた流れやトレーニング方法、ランニンググッズを紹介していきます。
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