マラソンのペースメーカーとは!ペーサーを利用するメリットと注意点
「一人だとペース配分が分からない」「何とか目標タイムまでに完走したい」方は必見です。
この記事では、マラソン大会で配置されるペースメーカーについて紹介します。
マラソン大会では目標タイムに向け、先導してくれるペースメーカー(ペースランナー、ペーサーとも呼ぶ)と呼ばれるランナーがいます。
一人で走るのが苦手な方、目標達成したい方は、ぜひ、ペースメーカー(以下、ペーサー)を利用してみてください。
この記事を読めば、ペーサーを利用するメリットと注意点が分かります。
ペースメーカー(ペーサー)とは
ペーサーとは、目標タイムに向け、先導してくれるランナーのことです。
コースの地形(アップダウンの場所)や当日の天候(気温や風の強さ)、コースの渋滞情報(特にスタート直後)などを考慮しながら、走ってくれます。
なので、サブ4(4時間以内に完走)目標ならサブ4のペーサーに、サブ5.5(5時間30分以内に完走)目標ならサブ5.5のペーサーについていけば、目標のタイムで完走できます。
(ペーサーは)色付きのゼッケンを着用したり、風船をぶら下げていたりと、他のランナーが遠くから見てもでも分かるような服装で臨まれます。
また、設定タイムは15分〜30分間隔で設定されていることが多いです。
例えば、「湘南国際マラソン」では、下記の設定タイムでペーサーが配置されています。
2時間50分 / 3時間00分 / 3時間15分 / 3時間30分 / 3時間45分 / 4時間00分 / 4時間30分 / 5時間00分 / 5時間30分 / 6時間00分
下記は、「金沢マラソン」の設定タイムです。
3時間00分 / 3時間30分 / 3時間45分 / 4時間15分 / 4時間30分
下記は、「福岡マラソン」の設定タイムです。
3時間00分 / 3時間30分 / 4時間00分 / 4時間30分 / 5時間00分 / 5時間30分 / 6時間00分
ご覧のように、大会によって設定タイムが異なります。
ペーサーを利用して走る方は、大会選びの段階で、自分が目標としているタイムにペーサーがいるか確認しましょう。
ペースメーカーを利用するメリット
【メリット①】オーバーペースを防げる
興奮と緊張、そして「目標を達成したい」という前向きな気持ちから、レースが始まると、あり余ったエネルギーを放出して、スタートから飛ばしてしまうことがあります。
当然、この日(レース本番)に向けて調整しており、身体が絶好調なので、仕方ない部分もあります。
しかし、スタートから飛ばしすぎると、必ずといって良いほど、中盤から終盤にかけて失速し、悪い結果を招く可能性があります。
ペーサーを利用することで、慎重に入ることができるため、レース後半までしっかりエネルギーを温存できます。
練習のときから、スタートと同時にペースを上げてしまう方は、ぜひ、ペーサーを利用しましょう。
【メリット②】イーブンペースで走ってくれる
ペーサーは最初の1kmから最後の1kmまで、一定のペース(イーブンペース)で走るよう、努力してくれます。
イーブンペースは、体力の消耗を抑える走り方です。
なので、1kmごとに速かったり、遅かったりと、波のある走り方より体力を温存できます。
普段の練習時から、イーブンペースで走るのが苦手な方は、ペーサーを利用しましょう。
[補足] 前半は設定ペースより速く走りがち
ペーサーは「ネットタイム」ではなく、「グロスタイム」でフィニッシュできるように走ります。
下記が、「ネットタイム」と「グロスタイム」の説明です。
- ネットタイム:自分がスタートラインを通過してから、フィニッシュするまでのタイム
- グロスタイム:号砲が鳴ってから、フィニッシュするまでのタイム
整列時、後方からのスタートとなった場合、号砲から10〜20分後にスタートすることもあります。
そのため、スタート直後の遅れ(10〜20分)を取り戻そうと、前半、ペースが速くなりがちです。
そのときのペーサーの走るスピードによりますが、15〜20kmあたりから、本来走るべくペースに落ち着きます。
「イーブンペースに走ってくれる」とは言っても、前半はやや速いペースになることを頭に入れておきましょう。
【メリット③】逐一、時計を確認しなくていい
ペーサーと走ることで、時計に集中する必要がなくなります。
そのため、別のところに頭を使うことができ、より自分の走りに集中することができます。
一人で走る場合、目標達成に向けて順調に走れているか、逐一、時計をチェックしては、ペースを上げたり、下げたりと、頭を使ってしまいます。
下記は、一人で走っているときに、つい考えてしまう「ペース配分」に関する内容です。
- 「このままのペースだと、目標に届かない?」
- 「いや、10分ほど貯金があるから、後半、遅くなっても間に合う」
レース時は肉体的にも、精神的もどんどん疲労が溜まっていく競技です。
ペーサーを利用することで、「ペース配分」に関して、考える必要がなくなり、かなり身体がラクになるでしょう。
関連記事:マラソンのペース配分の目安!最高のレースを実現するためのレース戦略とは
【メリット④】コースの情報や励ましの声掛けをしてくれる
ペーサーは経験豊富なランナーが務めており、あなたより、今走っているコースを熟知しています。
そのため、
- 「この先、給水所です。気温が高いので、しっかり水分補給しましょう」
- 「この先、海風が強いです。私を風よけに使ってください」
- 「ラスト1kmで、上り坂があります。坂を超えたらゴールなので、もうひと踏ん張り頑張りましょう」
など、コースに関する情報を提供してくれます。
(ペーサー自身)10km、20km、30kmと、あなたと一緒に走行しているからこそ感じる、コースの状況や天候を踏まえた、適切なアドバイスも特徴です。
また、レース後半は「あとちょっとだから頑張ろう!」と、励ましの声掛けをしてくれます。
一人で走っていると、どうしてもネガティブなことばかり考えてしまうので、これらの声掛けは、「沿道の声援」と同じくらい、”モチベーションを維持する”のに役立ちます。
【メリット⑤】集団走
ペーサーの周りには、自分と同じ目標を持ったランナーが集まり、数人から数十人の集団で走ることになります。
10km、20kmと同じ時間を過ごすわけなので、いつしか仲間意識が芽生え、大きな支えとなります。
ときには、給水所で飲み物を取ってくれたり、(自分で用意した)塩分タブレットをくれたりするかもしれません。
レース終盤は「遅れることなく、一緒にフィニッシュしたい」という気持ちへと変わり、最後まで走り切るために必要な励ましになるでしょう。
【メリット⑥】風よけに使える
集団で走ると、”風よけ”に使え、風の抵抗を受けにくくなります。
「向かい風」や「横風」を直接受けることを回避できるため、余計な体力の消耗を抑えられます。
また、ホコリや虫などの異物が、目や口に入るのを防ぐ役割もあります。
ペーサーには”風よけ”として犠牲になってもらい、自分は風の影響を受けることなく、快適に走りましょう。
ペースメーカーを利用する際の注意点
【注意点①】途中でリタイアするペーサーもいる
体調不良やケガによって、途中でリタイアするペーサーもいます。
「ペーサーなんだから、最後まで先導しろよ!」って声も分かりますが、ペーサーと言っても、人間です。
予期せぬトラブルが起こりうるのがレースなので、そこは目をつぶりましょう。
ですが、トラブルを想定して、設定したタイムに2〜4人のペーサーが配置されている大会もあります。
フィニッシュ地点までに、2〜4人全員がリタイアすることは考えにくいですが、「この先で、ペーサー全員が離脱するかもしれない」と考えながら走ると、急な離脱にも柔軟に対応できるでしょう。
【注意点②】設定タイムでゴールする保証はない
経験豊富なペーサーでさえ、目標タイムでゴールする保証はありません。
当日の「天候」と「ペーサー自身のコンディション」によっては、設定タイムより1〜2分遅れてのフィニッシュとなる場合もあります。
わたしも過去、出場したレースで、「明らかに設定タイムでフィニッシュできないよな」というペーサーを見たことがあります。
ペーサーを利用するかは個人の判断ですが、「自分自身でペーサーに付いていく」と決めた以上、設定タイムでフィニッシュできなくても(ペーサーに)文句を言わないようにしましょう。
【注意点③】トイレ休憩の時間は組み込まれていない
ペーサーは、ランナー一人ひとりのトイレ休憩の時間は考慮していません。
なので、もし、トイレに行きたくなった場合、遅れを取ることになります。
1回であればまだしも、何度もトイレに寄ると、その都度、ペースを上げて(追いつこうと)体力を消耗してしまうので、なるべくトイレの回数は減らしたいところです。
トイレが近い方は、マラソン前の水分補給方法を工夫することで、トイレの回数を減らすことができます。
詳しくは下記をご覧ください。
関連記事:グリセリンローディングができる凌駕スマッシュウォーターとは?フルマラソン前におすすめの水分補給方法
【注意点④】転倒に注意
集団で走ると、足や腕がぶつかることがあり、その勢いで”転倒”することがあります。
転倒すると、「捻挫」や「骨折」する可能性があり、その後のレースに大きく影響します。
なので、周囲のランナーと”間隔を開けて”走るようにしましょう。
ペースメーカーを利用する際のヒント
【ヒント①】スタート前にペーサーにプランを確認する
整列時にペーサーに自己紹介をして、レースプランを確認しましょう。
入りの1kmのペースやレース中盤、レース後半の走り方などを共有しておくと、スムーズにスタートできるでしょう。
また、(自身の)懸念事項を伝えておくことで、レース中にアドバイスをくれるかもしれません。
とにかく、自身の目標達成のため、ペーサーを上手に活用しましょう。
【ヒント②】最初の数キロは時計をチェックして、適切なペースで走っているか確認する
「設定タイム通りに走れているか」「プラン通りに走れているか」、最初の数キロは時計を確認しましょう。
ここで問題なく走れていれば良いですが、「ペースが速すぎる」or「ペースが遅すぎる」場合は、集団を離れる必要があります。
ここばかりは自身の判断になるので、(レース当日の)自分のコンディションと相談して決断しましょう。
また、レース前日に、自分ひとりで走っても良いように、ペースを暗記しておきましょう。
【ヒント③】付いていけなくなれば、無理せず離れる
10km、15kmと問題なく付いていけていたが、急な体調不良で、ペースを維持できなくなる場合があるでしょう。
その際は、無理せず、集団から離れる決断をしましょう。
無理して付いていくと、体力がどんどん削られ、完走できなくなってしまうかもしれません。
まずは、完走することが一番なので、ペーサーから離れ、自分のペースで走るようにしましょう。
実際にペースメーカーを利用してみた感想
「ちばアクアラインマラソン2024」でサブ4(4時間)のペーサーを利用し、初めてサブ4を達成しました。
そのときのレースの流れを振り返ります。
- 8km地点:サブ4ペーサーに追いつく(単独走)
- 8〜27km地点:ペーサーと並走(集団走)
- 27km地点:トイレ休憩(約1分のロス)
- 27〜35km地点:ペーサーを追いかける(単独走)
- 35km地点〜フィニッシュ:ペーサーと並走(集団走)
全ての区間でペーサーを利用したわけではありませんが、半分以上を一緒に走り、ペーサーの恩恵をしっかり実感しました。
以下、感じたポイントをまとめます。
イーブンペースで走ることでラクに感じた
下記が、42kmの1kmごとのペースです。
サブ4達成には5:40/kmのペースが必要ですが、ペーサーはほぼ一定の5:40/km(±10秒)で進んでくれました。
過去のレースでは、前半にペースを上げすぎて(5:10〜5:00/km)、後半に失速し、最終的に4時間5分でのフィニッシュという経験もありました。
しかし今回は、前半にペースを抑えられたことで、後半まで体力を温存でき、スムーズに完走することができました。
集団走がリズムを整えてくれる
スタート直後、前方のランナーに次々抜かされると、「自分のペースが遅いのでは?」と錯覚してしまい、時計を確認する無駄な動作が増えがちです。
しかし、ペーサーを中心にした集団にいることで、周りも同じペースで走行しているため、自分のリズムが自然に整いました。
リズムが安定すると、後ろから抜かされても焦ることがなく、安心して走ることができます。
単独走では、目標ペースを維持できず、無駄な体力を使うことが多いですが、ペーサー利用のおかげでこの課題を克服できました。
ペーサーの動きを自分で確認する必要がある
今回、2人のサブ4ペーサーがいましたが、1人が23km過ぎでペースを上げ、そのまま先に行ってしまう場面がありました。
このとき、私は時計を確認して「ペースが速すぎる」と判断し、もう1人のペーサーについていくことにしました。
結果的に、こちらのペーサーがイーブンペースで進み、サブ4手前でのフィニッシュを達成。
時計でペースを確認できる場合は問題ありませんが、持っていない場合は感覚で判断する必要があるため、少し難しいと感じました。
トイレに行くタイミングは慎重に
27km地点でトイレに立ち寄った際、約1分のタイムロスが発生しました。
そこからペーサーを追いかける形となり、追いついたのは35km地点でした。
この区間ではペースを上げる必要があり、かなりの体力を消耗しました。
トイレに行くタイミングは非常に重要です。
特に後半では、追いかける元気が残っているかが不安要素になります。
今回、私は「1kmくらいで追いつけるだろう」と軽く考えていましたが、実際には7〜8kmも追いかけ続けることになり、焦りからペースが乱れそうになりました。
トイレに行く場合は、体力が十分残っている前半で済ませることをおすすめします。
まとめ
今回は、ペーサーについて紹介しました。
ペーサーとは目標タイムに向け、先導してくれるランナーのことです。
一人で走るのが苦手な方、目標達成したい方は、ぜひ利用してみてください。
きっと、良い結果をもたらしてくれるでしょう。
本日は以上です。
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【要チェック】フルマラソン完走ロードマップ
フルマラソン出場までの流れをまとめました。
初めてフルマラソン出場する方を対象に、下記の内容が分かります。
マラソン大会の選び方
購入すべきランニンググッズ
完走するためのトレーニング方法
レース前日や当日の過ごし方
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